あの朝、何が起きていたか
日常清掃には、1人で入る現場があります。
その1人が休むと、掃除が止まります。
連絡が来るのは、たいてい朝です。体調のことですから、責められる話ではありません。
けれど建物は待ってくれないので、誰かが行くことになります。
そして、探す時間より、行く時間のほうがずっと重いんです。
探すのは、事務所でもどこでもできます。けれど自分が現場に入ってしまうと、その間はほかのことが何もできません。
面接の日程を組むことも、見積を出すことも、書類を作ることも、全部そこで止まります。
欠員は、事故ではありません。必ず起きます
欠員には、2通りあります。急な体調不良と、あらかじめ分かっている休みです。
後者で一番大きいのが、有給休暇です。
人を雇っていれば、有給休暇は必ず発生します。そして、取っていただくものです。
ここは、1人現場でも変わりません。
つまり、「1人現場の担当者は休まない」という前提は、そもそも成り立たないということです。
1人現場でも、欠員は必ず出ます。
問題は「出るかどうか」ではなく、
「出たときにどうなっているか」でした。
ただ、有給休暇は事前にお申し出をいただけます。急な体調不良と違って、こちらには準備できる時間があります。
それなのに、当日になってから慌てていたのは、備えていなかったからでした。
これは、1つの問題ではありませんでした
「人が足りない」と一言で言ってしまいがちですが、当時私が見ていたのは、ぐるぐる回り続ける1つの輪でした。
- 欠員が出る
- 代わりが見つからず、管理側の人間が現場に入る
- その分、定期清掃業務や、事務所での業務が止まる
- 面接の日程が組めない。採用の機会が減る
- 人が増えないので、現場1人あたりの受け持ちが増える
- 入ったばかりの方が量に驚いて、続かない
「採用できない」「続かない」「教えられない」は、別々の問題に見えて、同じ輪の上の、別の場所でした。
だから、どれか1つだけ手を打っても、輪は回り続けます。
輪を止めるなら、
一番止めやすいのは「欠員が出たあと」でした。
やったこと① 複数名の現場は、決めるのを現場にお返ししました
この形が回るかどうかは、仕組みだけではなく信頼関係が大切です。
「話し合って決めてください」とお願いできるのは、その方々が、こちらに嘘をつかないと分かっているからです。
逆に言えば、そこが無い状態でこれをやると、丸投げになります。
では、その信頼関係はどこから来たのか
特別なことはしていません。
空き時間ができたら、少し業務を手伝いに行く。
トイレットペーパーの在庫を控室に納品するとき、ついでに人数分のドリンクを持っていく。
その程度のことです。ただ、その程度のことの積み重ねしか無かったとも思っています。
現場の方から見れば、管理側の人間は「用事があるときだけ来る人」です。
日常清掃スタッフさんがお元気か、何か困ったことや変わったことが無いかを聞きに行くことは、大切な「用事」です。
日々の積み重ねで、「話し合って決めてください」が通るかどうかが変わります。
実際にお伝えしたこと
2人以上で入っている現場では、こうお伝えしました。
「話し合いで決めてもらって、
決まったシフト変更の内容だけ、教えてくださればいいですよ」
それまでは、誰かが休むたびにこちらへ連絡が来て、こちらが誰かに頼んで、こちらが返事をして……という形でした。 その真ん中を、抜きました。
現場の方どうしのほうが、お互いのご都合をよくご存じです。こちらが電話をかけ直すより、そのほうが早く決まりました。
決まった結果だけをいただければ、あとは記録して回せます。
これで空いたもの
調整の電話が減りました。それ以上に、「決めるために自分がその場に居なければならない時間」が減りました。
やったこと② 1人現場は、代われる人を「先に」作っておきました
問題はここからです。1人現場には、話し合う相手がいません。
休みの連絡が来てから「誰か入れる人はいないか」と探し始めても、間に合わないのです。
その現場のやり方を知っているのが、その現場の担当者だけだからです。
そこで、欠員が出る前に、引継ぎの研修をしておくことにしました。
- STEP 1 その現場の担当者と、近くの別現場の担当者を組み合わせる 移動できる距離か、時間帯が重ならないかを、先に見ておきます。
- STEP 2 早朝に立ち会って、2人そろって現場を回る 日常清掃は朝が早いので、実際の作業時間に合わせました。1現場につき1回きりです。
- STEP 3 「この現場は、この方も入れる」を控えておく 次に休みの連絡が来たとき、探すのではなく思い出すだけで済みます。
かかる手間は、1現場につき早朝1回分です。
それでも、欠員のたびに自分が現場に入るのと比べれば、はるかに軽く済みました。
「探す」を速くするのではなく、
「探さなくていい状態」を、先に作っておく。
それでも、足りない日はありました
この形を作っても、誰も入れない日はありました。
そういう日は、通常の勤務時間の前に現場へ行って日常清掃を終わらせてから、 別現場の定期清掃に入ったり、事務所に行ったりしていました。
労務についての具体的な判断は、社会保険労務士など専門の方にご相談ください。当方では扱っておりません。
それでもこの話を書いたのは、これが珍しい話ではないからです。
同じことをされている方が、今もどこかの現場にいらっしゃると思います。あのころの私がそうだったように、
「自分が行けば、今日は回る」と考えてしまうからです。
ただ、それをしている限り、輪は止まりません。止めるために使うはずだった時間を、その日に使ってしまっているからです。
もう1つ。新しい方が見ているのは「今の現場」です
入ったばかりの方が続かない理由を、長い間「仕事がきついから」だと思っていました。
でも、そうではありませんでした。
たとえば、本来5人で回す現場を、欠員が続いて3人で回しているとします。
その3人の動き方は、当然きつくなります。5人分を3人で分けているのですから、そうなります。
そこへ、新しい方が1人入られる。
その方が目にするのは、その3人の働き方です。そして、こう受け取られます。
「この会社では、これが普通なんだ」
実際には、普通ではありません。欠員で歪んでいる状態です。
けれど、入ったばかりの方に、それは分かりません。比べるものがないからです。
だから「聞いていた話と違う」になります。驚かせているのは仕事の中身ではなく、今の人手の状態のほうでした。
そして、その方が続かなければ、欠員が1つ増えます。また輪が回ります。
できること
-
1
今が通常ではないことを、その場で言葉にしてお伝えする
「本来は5人で回す現場です。今は3人なので、こういう動きになっています」
これを言うか言わないかで、受け取り方が変わります。黙っていると「これが普通」になってしまいます。 - 2 できるなら、人が足りている現場から入っていただく 一番苦しい現場に新しい方を入れたくなりますが、そこは辞められやすい場所でもあります。 まず慣れていただいてから、というほうが結果的に早いことがあります。
- 3 求人の原稿と、面接でお伝えする内容を、実際の一日に合わせる よく見せた求人で来ていただいても、続かなければ、また欠員から始まります。そのままを書いた求人のほうが、結果的に早いと思っています。
今日からできること
-
1
複数名の現場は、決めるのを現場にお返しする
「話し合って決めて、結果だけ教えてください」とお伝えするだけです。今日できます。
(もちろん、日常清掃スタッフさんとの信頼関係があっての話です) - 2 1人現場を書き出して、「代われる方がいない現場」に印をつける 全部でなくて構いません。一番気がかりな現場を、1つで十分です。
- 3 その1現場だけ、早朝の引継ぎを1回やってみる 1回で「その現場に入れる方」が1人増えます。次の欠員のとき、走らずに済むかもしれません。
たいてい、ここで詰まります
ここまで書いたことを実際にやってみると、だいたい同じところで手が止まります。
- どの現場とどの現場を組ませればいいか、決められない
- 早朝に立ち会う時間が、そもそも取れない
- 代われる方が、社内に1人もいない
- パートリーダーにお願いできる関係が、まだできていない
どれも、私が詰まったところです。
ここから先は会社ごとに事情が違うので、同じ答えにはなりません。
無料60分の「お困りごと棚卸し」で、御社の場合をご一緒に整理します。
最後に
日常清掃の人のやりくりは、道具1つで片づくものではないと思っています。 現場は増えていくのに、人は増えない。その中で持ちこたえていらっしゃる方が、たくさんおられます。
それでも、欠員が出たあとに自分が走る回数は、少しずつ減らせます。
減った分の時間で、採用のことや、続けていただくための工夫に手が回るようになります。輪は、そこからしか緩まないと思っています。
この記事の内容は、そのままお使いいただいて構いません。ご自身の会社で進めていただいて、まったく問題ありません。